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人魚廼舎 詞藻苑  NINGYO NO YA ―shisou en―

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半過去

従前ならものを見れば口を衝いて出た言葉が、出ない。
感取した儘、澱(おり)の様に溜まっているようだ。

不全ながら、心覚えに記して置く事にする。


5月の未だ柔かく、日を透かして精彩滴る新緑。
その一葉一葉を風が細やかに動かし、葉面に反照した光がちらちらと揺れるのが、“風光る”の感である。

それが次第に青味を増し繁茂して往くと、庭に吹く風も変わって鮮烈に感じる。
初夏の輝きを感じるのはこの頃である。


扨(さて)6月。
庭を見れば、晴れていれば昆虫や鱗翅の類が常に動いている。
それを索然と眺めるのが日課である。

此節の不規則な気候は、僕を不安定にさせるに充分である。
勿論、この月への特別の心情が柵(しがら)んでいる事は言(げん)を俟(ま)たないが。



前梅雨の寒さにそぐわず車百合 / 棹



人魚詩舎 コトバnoiseミ
『半過去』 http://mblg.tv/u39nss/entry/127/?cur=archive&val=all
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