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人魚廼舎 詞藻苑  NINGYO NO YA ―shisou en―

Home > ブログ > 日乗(にちじょう) ―“現代書生”の色色とその生活―

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初秋(はつあき)

秋彼岸を迎えた今になってこの題名は如何なものかと危ぶむ心もあるが、今になって秋気が新鮮に思えるのだ。
以前は秋を、夏を引き摺っただけと、ないものと軽んじていたが、なかなか好いものと思い知った。


早朝はすっかり新涼を催し、着る物を迷っている内に残暑がやってきて、結局普段の服装に落ち着く。

昼は陽射(ひざし)は未だ強くとも、初秋風(はつあきかぜ)を受けて清々(すがすが)しい。

一年以上表に出ず、無論夜気などには全く以て触れていなかったものだから、務めから遅く帰る道は清新に感じる。
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黝(あおぐろ)

本日は祝日であるから勤め先も休診日である。

日曜という日は、明日の労働を憂えて寝起きの頃より鬱(ふさ)いで居る僕だが、昨日は穏やかに過ごした。


濡れ縁に降りて振り仰ぐと、遠い台風の作用か、高所の雲が陸続と運ばれ流されて往く。
目を庭前に落すと、黒い蝶が軽々とひらめかしていた。
揚羽の類であろう。はて、黒揚羽か鴉揚羽かしらなど幼劣な憶測などしない。
昔、小学校の女教師が青い蝶を見て、僕等生徒に「ほら、ルリアゲハだよ」と抜かしていた様に。
無論、瑠璃揚羽が日本に居る訳がない。


観れば容易に鑑別が付く。後翅に尾状突起が無いのだから。
長崎揚羽の雄である。
渠(かれら)は歴然とした性的二形があるから、雌雄さえ僕でも解る。


黒色の翅が光の具合で青く見えるのが霊妙この上ない。

辯疏(べんそ)

傭役(ようやく)されて幾日が経った。
2度ほど早退しながらも、辛うじて続けている。

使用者としては、公立四大卒で国家資格持ち、斯界(しかい)では高名である歯科診療所に3カ月ではあるが勤務した経験が有るという事から、少なからず期待して雇傭(こよう)したのだろう。

ところが恰(まる)で御話にならない働き振り。糅てて加えて得体の知れない病身と、却って厄介者を拾って仕舞ったと長嘆息を洩らしていることだろう。
当該の本人としては善くもまあ免職を赦されているものだと思う。


職場では事ある毎に4年間何を勉強していたのか、と難詰される。

前の勤め先では専門学校であろうが2年制、3年制であろうが問わず、寧(むし)ろ新設の四大は即戦力としては頼りないという認識であった為、学歴について問われることは無かった。

況(ま)してや僕は臨床実習に出るまでの2年半、副専攻の教育学に熱心だった為、試験対策以上の勉強をしていなかったのである。具体的には当日2時間程度である。
それに、四大であれば実習期間も長かろうと解釈されるがとんでもない。実際は既定日数も際どいのである。


そうは云っても、職場で云い訳をする訳にはいかない。
総てを身に受けて、黙して今は働くしかない。

無花果

イチジク―一般に花を咲かせずに実をつけるように見える故(ゆえ)“無花果”と表記される。
実際は周知の通り、花嚢内部に数多(すうた)の花が在り、熟すれば幾多の小果と成り、一つの果実として生食する訳である。


我が家の庭にも植えてある。
一つは虫に呉(く)れてやろう、次のは明日には食べられるだろうと心待ちにしていたものが、起きて見れば見事無惨な様子で食い散らかしてあった。
大方、鵯(ひよどり)の仕業だろう。

青月

今夜は月が満ちている。

それに被さる様に薄雲が広く覆うが、月光は眩(まばゆ)いばかりで、却って光暈(こううん)が映えている。


今月二度目の満月である。
これを英語でblue moonと称する。

見ると幸せになれるとか云う話もあるようだ。
僕には聊(いささ)か風情を欠いたように思われるのだが。

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